機関投資家向けカストディサービスの需要が増加

機関投資家向けカストディサービスの需要増加について解説し、その背景や最新動向、サービスの重要性を詳しく紹介します。

暗号資産インフラ企業のFireblocks Trust Companyが、GalaxyBakktFalconXCastle Islandとの連携を打ち出し、機関投資家向けのカストディサービス拡大を進めている。米国では現物ETFを含む商品設計や、企業のデジタル資産活用が広がり、規制準拠の保管体制を求める動きが強まっている。こうした環境を追い風に、コールドストレージを軸にした保管インフラの整備が加速し、需要増加が市場の焦点となっている。

Fireblocksが提携拡大で機関投資家向けカストディを強化

Fireblocksは、機関向けの保管機能を担うFireblocks Trust Companyを軸に、複数の暗号資産プレイヤーとの連携を進めている。対象には、暗号資産取引やプライムサービスを手がけるGalaxy、デジタル資産関連事業のBakkt、機関投資家向け暗号資産サービスのFalconX、投資領域で存在感を持つCastle Islandが含まれる。

狙いは、ETF関連のオペレーションや、企業が暗号資産を財務で扱うデジタル資産財務(DAT)、さらにトークン発行やステーキングといった実務で、規制に沿った保管と運用を一体で支えることにある。資産管理の現場では、保管の厳格さだけでなく、担保管理や決済面まで含む設計が求められており、同社は「カストディと担保管理に注力する」という方針を前面に出している。

機関投資家向けカストディサービスの需要が増加しており、資産管理の重要性と最新のトレンドについて解説します。

NYDFSの枠組みとコールドストレージで信頼性を押し上げる

Fireblocks Trust Companyは、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の監督下で運営されている。Fireblocksは2024年5月にNYDFSの認可を受けた限定目的信託会社として同社を立ち上げ、8月にはニューヨーク州のチャーター取得を公表している。米国の規制枠組みで保管機能を提供できることが、機関投資家の採用に直結しやすい。

インフラ面では、同社はコールドストレージ技術を基盤に、2,400超の金融機関と直接接続していると説明する。暗号資産の保管では、鍵管理の方式や運用手続きがリスクの起点になりやすいだけに、セキュリティ設計と監査可能性を両立する体制が焦点となる。規制準拠の「保管」が、導入を迷う機関の背中を押す構図が鮮明だ。

ETFやDATが押し上げる需要増加と証券保管の再定義

市場で目立つのは、暗号資産が投機的な対象にとどまらず、金融商品や企業財務の領域に入り込んでいる点だ。ETFの組成・運用では、保管や評価、リバランス、監査対応までを含む実務が発生する。従来型の証券保管に近い厳格さが、デジタル資産にも求められるようになっている。

例えば、上場投資商品を扱う運用会社や、暗号資産を保有する企業にとって、カストディは単なる金庫ではない。取引先との担保差し入れ、内部統制、会計・報告を成立させる基盤であり、事故が起きた場合の影響は市場全体に波及しうる。だからこそ、リスク管理資産保護の観点から、規制のある枠組みでの運用が選好されている。

投資信託や年金マネーの視点が「保管の質」を変える

投資信託や年金、保険会社といった機関投資家は、資産の分別管理や報告の一貫性を重視する。暗号資産がポートフォリオの一部に組み込まれるほど、保管事業者に求められるのは「安全」だけではなく、監査に耐える運用フローと透明性になる。どれほど高度な金融商品でも、バックオフィスが回らなければ資本は入ってこない。

この変化は、暗号資産の世界でしばしば語られてきた「自己管理」の価値観とは別の方向性でもある。機関の現場では、担当者の交代や委託先管理が前提であり、属人的な運用は許容されにくい。結果として、保管インフラは従来の金融サービスの規律に近づきつつある。

カストディサービス市場動向は銀行参入とテクノロジー投資が焦点に

市場動向としては、フィンテックだけでなく大手金融機関の参入が相次いでいる。Deutsche BankCitigroupU.S. Bancorpなどがデジタル資産関連の保管やサービス提供を発表し、機関向け領域での競争が強まっている。規制や信用のハードルが高い分、参入企業の顔ぶれがそのまま市場の成熟度を示す。

一方で、保管ビジネスは人員やサイバー対策、コンプライアンス対応など運用コストが重い。手数料競争も起きやすく、規模や技術投資の差が収益性を左右する。こうした構造は、株式や債券など既存資産の保管市場でも見られたが、デジタル資産では技術要件が一段と増える。

2035年に向けた成長予測と北米主導の現実味

保管サービスの世界市場は、2026年に517億4,000万米ドル規模から始まり、2035年に990億5,000万米ドルまで拡大するとの予測が示されている。年平均成長率(CAGR)は7.5%とされ、伝統資産に加えデジタル資産やオルタナティブの取り扱い増が背景にある。

地域別では、機関投資家層と金融インフラが厚い北米が存在感を保ちやすい。FireblocksがNYDFSの監督下で体制を整えてきたことは、この市場特性と整合する。規制準拠のカストディが整うほど、新しい商品設計や資金流入が現実味を帯び、金融サービスとしての保管の位置づけはさらに重くなる局面に入っている。