中国が南シナ海での米軍のプレゼンス強化に反発を強めている。フィリピン軍は12、13日に、海上自衛隊と米軍とともにフィリピン沖の南シナ海で「海上協同活動」と呼ぶ合同訓練を実施し、14日に公表した。緊張が続く海域での協力を可視化する動きに対し、中国軍はスカボロー礁周辺で海空合同パトロールを実施したと発表し、軍事緊張の高まりが改めて浮き彫りになった。
南シナ海での日米比合同訓練が示した米軍プレゼンス強化
フィリピン軍の発表によると、今回の訓練には海自の輸送艦「おおすみ」に加え、米海軍のイージス駆逐艦「ジョン・フィン」、フィリピン海軍のフリゲート艦「ホセ・リサール」が参加した。フィリピン側は、南シナ海で中国が威圧的行動を強める中、3カ国の結束を示す狙いがあるとしている。
フィリピン軍は、日米比の3カ国による同海域での訓練が3月以来だとも説明した。頻度を保ちながら継続する枠組みは、作戦面だけでなく、危機時の連絡や共同対処の手順を擦り合わせる意味合いも大きい。海上での偶発的衝突が起きうる環境では、こうした積み上げが抑止の輪郭を形作る。
中国の反発とスカボロー礁を巡る領有権対立の再燃
南シナ海を巡っては、中国が今月10日、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置するとフィリピンが主張するスカボロー礁(中国名・黄岩島)について、自然保護区の設置を承認したと表明した。フィリピン側はこれに反発し、管轄権を侵害する動きだとして警戒を強めている。
スカボロー礁は、領有権と海洋権益の主張が鋭くぶつかる象徴的な地点だ。漁場としての価値に加え、実効支配や行政措置の積み重ねが、主張の既成事実化につながり得るためである。海域の管理や規制の名目が何であれ、当事国にとっては実質的な支配の問題として受け止められやすい。
こうした状況下で、遠藤和也駐フィリピン大使は14日までに、国連海洋法条約に基づく仲裁判断に触れ、当事国は「従う義務がある」とX(旧ツイッター)に投稿した。日本が法の枠組みを重視し、フィリピン支持の立場を明確にした発信であり、外交面でも緊張の連鎖を断ち切るのが容易ではない現実を映している。
中国軍の海空合同パトロールと安全保障への波及
中国の人民解放軍南部戦区は31日、スカボロー礁周辺で海空合同パトロールを行ったと発表した。発表では、国家主権と安全を守り、南シナ海の平和と安定を維持すると主張している。日米比の動きを含む対外環境の変化に対し、中国が即応的に軍事行動を示す構図が続く。
中国側は、米国防長官がアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で行った演説への反発が背景にあるとみられる。地域の安全保障議論の場での発信が、現場の行動と連動しやすいのが南シナ海の特徴だ。政治メッセージが艦艇や航空機の運用に直結すれば、現場の判断にかかる負荷は増す。
一方で、海上の距離が詰まりやすい海域では、相手の意図を誤読しないための手続きや連絡の確保が不可欠になる。日米比が訓練を重ね、米軍のプレゼンスを可視化するほど、中国も自国の活動を強める傾向があり、軍事緊張が循環しかねない。対立の抑止と、事故回避の両立が問われる局面だ。
最前線の海域で積み上がる小さな動きは、外交関係の温度差としても表面化する。海での行動が政治の交渉余地を狭めるのか、それとも対話を促す圧力になるのか。南シナ海は、その分岐点を映す試金石になっている。
