Microsoftは、広告プラットフォームMicrosoft AdvertisingにAI機能を組み込み、検索広告の運用をより少ない手作業で回せるようにする取り組みを進めている。東京で開かれた「Accelerate Roadshow Tokyo 2025」では、生成AI「Copilot」を軸に、会話型の体験と広告配信をつなげる設計が示され、運用面では自動化と制作支援の両輪で強化する方針が語られた。検索行動が「キーワード入力」から「AIとの対話」へ広がるなか、広告主にとっては配信設計だけでなく、露出のされ方そのものが変わり始めている。
Microsoft Advertisingが進めるAI機能統合と検索広告の自動化
イベントで繰り返し強調されたのは、Microsoft Advertisingが単なる配信基盤ではなく、人工知能を前提にした運用環境へ移行している点だ。CopilotはWordやExcelなどの業務アプリに加え、Bingや広告管理画面にも展開されており、現場の担当者が日々向き合う管理UIの中に生成AIが常駐する形になっている。
背景には、検索体験の変化がある。Microsoft側は、Bingのデイリーアクティブユーザーが1.8億人以上であることを示しつつ、Copilotのチャット利用が前年比で2.5倍に増えていると説明した。検索窓に短い語句を入れるだけでなく、要件を会話で詰める使い方が増えるほど、広告の接点も従来の「検索結果の枠」から、対話の流れの中へ拡張していく。
また、Copilotは音声でのやりとりにも対応し、Microsoftによれば音声入力のデイリーアクティブユーザーは、2024年10月の機能強化後の3か月で2.5倍以上に伸びたという。音声UIが日常化すれば、広告の文脈適合や配信判断のスピードがより重要になる。そこで鍵になるのが、機械学習を用いた入札・配信の最適化であり、Microsoftが掲げる広告技術の進化は、運用の省力化と意思決定の短縮を狙っている。

Copilot広告のテスト拡大で変わる広告最適化の指標
会話型AIの画面上で表示されるCopilot関連の広告は、従来の検索面とは異なるロジックで評価され始めている。Microsoftの調査として紹介された資料では、Copilot上で会話の流れに沿って出る広告が、従来型の検索広告と比べてCTRが69%向上し、CVRが76%向上したとされた。クリックや購入が増えるという結果は、広告が「探している理由」に寄り添う形で提示されるためだ、という説明が添えられた。
日本では4月からテストが始まったとされ、現時点では段階的な展開に位置づけられている。対応プロダクトとしては、DSAやRSAなどのテキスト広告、Performance Max、ショッピング広告、マルチメディア広告が挙げられた。既存の枠組みを活かしながら、対話型の面に接続していく構図で、広告主にとっては大掛かりな作り替えよりも、配信設計とクリエイティブの調整が主戦場になりそうだ。
ただ、成果が良いだけでは継続的な信頼につながらない。そこでMicrosoftが示したのが「Ad Voice」だ。「なぜこの広告が表示されたのか」をユーザーに説明する機能として紹介され、会話内容と広告の関連を可視化する狙いがある。生成AIの時代は、露出の精度と同じくらい、納得感の担保が問われる。説明責任を設計に組み込む点は、広告の受け止められ方を左右する論点になっていく。
Ads Studioと新フォーマットが示すデジタルマーケティングの次の現場
運用の自動化に加え、制作現場に踏み込むのが「Ads Studio」だ。Microsoft Advertisingの管理画面内で使える制作支援ツールとして説明され、現時点で利用できる機能には、静止画の背景生成と、Ads Studioで作ったアセットのパフォーマンスレポートが含まれる。制作から効果確認までを同じ画面で回せる設計は、担当者の作業分断を減らし、改善サイクルを短くする。
今後の機能としては、静止画を動画にする生成機能や、素材がなくてもプロンプトから作れる生成機能がリリース予定とされた。さらにパイロット版として、ロゴ登録だけでブランドに沿ったクリエイティブを自動生成する「ブランドキット」も紹介されている。制作のハードルが下がるほど、差が出るのは企画や検証の速度だ。担当者の役割は、手を動かす時間から、仮説設計と評価の比重へ移っていく。
フォーマット面では米国でのテストとして「ダイナミックフィルター」と「ショールーム広告」が挙げられた。前者は意図に応じたフィルターを自動生成して絞り込みを助け、後者はブランド名をトリガーにCopilot内で広告を出し、クリック後にチャット画面が移動してリンク先が並走表示されるという。会話と閲覧が同じ画面で連動する設計は、従来の遷移型導線とは発想が異なる。
Microsoftが将来像として語ったのは、AIがパーソナルアシスタントとして商品探索から購入まで支える体験だ。「ブランドエージェント」や、Copilot上で検索から購入・決済まで完結させる構想も提示された。こうした方向性が進めば、デジタルマーケティングはクリック獲得だけでは測れない領域に広がる。対話の中で選ばれるための設計を、広告主がどう組み立てるかが次の焦点になる。
